中城村護佐丸歴史資料図書館

平成28年5月30日(ごさまるの日)オープン!!
中城村の英雄「護佐丸」や世界遺産・中城城跡をはじめ、琉球史が学べる歴史資料図書館です。本ブログでは、当館の企画展やイベント情報、活動様子などを紹介します。
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続・館長ブログ「吉の浦だより」

漂着ペットボトルとオカヤドカリ(吉の浦だより45)

夏の「オカヤドカリ展」の準備でオカヤドカリ類(Coenobita属)の資料を調べていたところ、「オカヤドカリ類が海岸に漂着したペットボトル等に入り込んで大量に死んでいる」という主旨の論文がありました。ペットボトル等のプラスチックごみは近年よく話題になりますね。死んだウミガメの胃からビニール袋が出て来たという様な記事はよく見かけますし、ヒトを含む各種の動物がマイクロプラスチックを体に取り込むことで、体調に悪影響を及ぼすことが心配されています。たいていプラスチックを体内に入れることが問題になっている訳ですが、プラスチックに入り込んで死ぬとは!

漂着ペットボトルとオカヤドカリ(吉の浦だより45)
ペットボトルを確認したビーチ(2024年6月1日撮影、吉の浦海岸)。

タイのプーケットでは、Coenobita rugosus(ナキオカヤドカリ;沖縄の海岸にも沢山います)がペットボトルなどの漂着ゴミに入り込んで死んでいて、ペット用の捕獲と共にこの種の個体群を減少させる要因になり得るとのことです(Bundhitwongrut, 2022)。同様に、南太平洋のヘンダーソン島とココス島では、Coenobita perlatus(サキシマオカヤドカリ;沖縄では非常に少ない)が、年間61,000匹(ヘンダーソン島)と508,000匹(ココス島)死んでいると推定されています(Lavers et al., 2020)。

漂着ペットボトルとオカヤドカリ(吉の浦だより45)
ナキオカヤドカリ。文化庁の許可を得て調査を行ったときの写真(2020年8月7日撮影、吉の浦海岸)。

漂着ペットボトルとオカヤドカリ(吉の浦だより45)
漂着ゴミ(2024年6月1日撮影、吉の浦海岸)。

そもそも、何故オカヤドカリがペットボトル等に入り込むのかという事については、主に内容物の残りや溜まった水を求めてと考えられていますが、プラスチック自体に誘引物質が含まれているという説もあります。また、ボトル内でオカヤドカリが死ぬと、死骸が仲間を強力に引きつけるのだそうです。オカヤドカリは基本的に不満足な「家(宿貝)」で我慢しているものが多く、仲間の死は適当な「空き物件」の出現を意味するからと説明されています。ボトル内に入ったオカヤドカリは、ボトルの角度によってはクチの方に上がれず、また沢山入り過ぎて互いに身動きができなくなる場合もあります。そして、日中の暑さと乾燥で死んでしまうのです。

漂着ペットボトルとオカヤドカリ(吉の浦だより45)
ペットボトルの殆どにフタが付いていました(2024年6月1日撮影、吉の浦海岸)。

さて、吉の浦海岸にもペットボトル等が沢山漂着するので、同じような状況が起きていないか気になります。そこで、6月1日(土)、海岸に行って確認してみました。場所は浜漁港に最も近い、第1突堤と第2突堤間のビーチです。この日は強い雨で、与勝半島も津堅島も見えません。

漂着ペットボトルとオカヤドカリ(吉の浦だより45)
雨に煙る与勝半島(2024年6月1日撮影、吉の浦海岸)。

漂着ペットボトルとオカヤドカリ(吉の浦だより45)
外国からの漂着も多い。これは杭州の商品(2024年6月1日撮影、吉の浦海岸)。

ビーチではペットボトル54個、ガラス瓶5個を見つけましたが、1つのペットボトルを除き、皆フタが付いていました。そして、フタが無いペットボトルにはオカヤドカリ、貝殻(死骸がアリ等に片づけられてしまうことがあり、そういう場合は宿貝のみが残ります)ともに見当たりませんでした。今回は、論文の様な状況は見られなかった訳ですが、これからも時々チェックしてみようと思います。

漂着ペットボトルとオカヤドカリ(吉の浦だより45)
猫も雨宿り(2024年6月1日撮影、吉の浦運動公園)。

【引用文献】
Bundhitwongrut, T. 2022. Beach Debris Causing Death of Land Hermit Crabs (Anomura, Coenobitidae). Nat. Hist. Bull. Siam Soc. 64 (2): 71– 76.

Lavers, J. L. , Sharp, P. B., Stuckenbrock, S. and Bond, A. L. 2020. Entrapment in plastic debris endangers hermit crabs. Journal of Hazardous Materials 387: 121703.

(文責:濱口寿夫)


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