中城村護佐丸歴史資料図書館

平成28年5月30日(ごさまるの日)オープン!!
中城村の英雄「護佐丸」や世界遺産・中城城跡をはじめ、琉球史が学べる歴史資料図書館です。本ブログでは、当館の企画展やイベント情報、活動様子などを紹介します。
★休館日:毎週火曜日、毎月第3木曜日、祝日の翌平日(祝日振替休)
★開館時間:平日・祝日10:00~19:00 土・日10:00~17:00

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続・館長ブログ「吉の浦だより」

パソコンで文献探し(吉の浦だより9)

パソコンとインターネットの時代になって一番良かったと思うことは、情報探索が便利になったことです。40年前ですと、例えばある生物の生態に関する文献を調べようと思ったらこんな感じでした。

大学図書館に行って関連分野の新刊雑誌の目次に片っ端から目を通して、読むべき論文を見つけ出してコピーします。さらに、その引用文献から他の必要な文献を探していくのです。「論文→引用文献→論文→引用文献…」という作業を繰り返すとたいていの文献を、古いものも含め、網羅できます。「Biological Abstracts」という電話帳のように大きくて厚い冊子を使う方法もあります。この冊子には世界中の主な生物学関係雑誌のタイトル、著者、要旨(abstract)が掲載されています。属名(学名の前半)索引がついているので、調査対象種やこれと同属の生物を扱った論文を特定し、その要旨を読んでコピーするかどうかを決めます。冊子体を触らなくなって久しいので(まだ刊行されているのでしょうか?)、ややうろ覚えですが、BAは毎月刊行されていたように思います。過去1年間の論文を浚うのに12冊に目を通さないといけない訳で、なかなか大変でした。活字が細かいので、老眼が進んだ今では同じ作業は出来そうにありません。

現在では、文献を探すために大量の紙資料に目を通すことはありません。例えば、琉球大学附属図書館に行けば館内端末から「Web of Science Core Collection」というデータベースにアクセスし、属名やキーワード検索で必要そうな論文を特定し、その要旨を読むことができます。その後は書庫から当該巻を探し出してきてコピーを取ることになりますが、中には端末からpdfファイルをダウンロードできる論文もあり、手間が省けます。以上は生物学関係の文献探しについてですが、人文系など他の分野でもそれぞれのデータベースがありますので事情は似たようなものではないかと思います(ご注意!現在、琉球大学附属図書館は新型コロナの関係で学外者の利用が停止されています)。

公共図書館や自宅のパソコンで文献を探すことも勿論可能です。近年は、文化財や歴史に関する調べものをする機会が多くなりました。こちらの方が、生物学分野より一般的に需要がありそうな気がしますので、私のやっている方法をご紹介します。もっと効率の良いやり方があると思いますが、参考になるところがあれば幸いです。

まず自宅の、インターネットに繋がっているパソコンでやってみましょう。やはり最初は「Google」です。例えば「安里のテラ」について調べたい場合、「安里のテラ」、「安里の寺」、「安里のティラ」、「安里 テラ」等のキーワードを打ち込んで検索します。この時、キーワードに様々な変化をつけて入力するのがコツです。「テラ」と「寺」では検索結果そのものや表示の順番が違ってきます。あれこれ試していると、意外な発見に出くわすことがあり面白いものです。時間がどんどん経ってしまいますが、自宅なので気にすることもありませんね。さて、グーグル先生で一般的なことは分かりますが、学問的な正確性は必ずしも保証されません。根拠資料を確認しないで、他者の書いた情報をそのまま転載しているHPもあり、コピペで誤りが拡散している恐れがあります。そこで、他の方法も併用します。

次に試すのが「CiNii」や「Google Scholar」です。「CiNii」は国立情報学研究所が公開しているデータベースで、日本国内で刊行された論文を探すとき非常に重宝します。「Google Scholar」では、日本語ならびに外国語の論文が出てきます。例えば港川人について調べたいとき、「港川人」や「minatogawa man」と打ち込むと、それぞれ日本語と英語の論文があがってきます。論文とは学術雑誌に掲載された記事で、学問的正確性や意義について、著者以外の専門家によるチェックが入っているものが多いのです。国内学術誌の論文については国立研究開発法人科学技術振興機構の運営する「J-STAGE」もあり、これは科学分野の論文だけではなく人文系の雑誌も扱っています。

調べものの作業において外すことができないのが国立国会図書館のHPです。トップページの目立つところに「NDL ONLINE」という表示と検索語の入力窓があります。試しに「中城村」と入力してみると298件ヒットしました。ちなみに一番上は中城村教育委員会生涯学習課文化係が刊行した『中城村の戦跡マップ』でした。

パソコンで文献探し(吉の浦だより9)
国立国会図書館

国会図書館には「NDL ONLINE」以外の検索システムもあります。トップページの下方に行きますと「国会図書館サーチ」と「国会図書館デジタルコレクション」というボタンが用意されていますので、こちらでも「中城村」を検索してみましょう。「国会図書館サーチ」では1094件ヒットしました。「NDL ONLINE」と「国会図書館サーチ」の関係はよくわかりませんが、結果が違うので両方とも検索するようにしています。

国会図書館デジタルコレクション」では230件の文献がヒットしました。これらの論文や書籍については、画像として読むことができます。著作権の切れたものですので、基本古い文献になりますが、つれづれなるままに昔の絵本など眺めるのもまた一興です。ただし「国立国会図書館限定」、「図書館送信限定」の表示があるものは、それぞれ、国会図書館内とデジタル化資料送信サービス参加館の端末のみで閲覧可能な文献で、自宅のパソコンでは見ることができません。

国会図書館のHPで出来るのは文献検索だけではありません。国会図書館の利用者登録をしていれば、一部の文献についてインターネット経由で複写申し込み・コピーの郵送受け取りができるのです!料金はかかりますが、県内の図書館にない文献を入手することができますし、自宅に居ながら申し込みできるというのは楽ちんでありがたいものです。請求書と振込用紙がコピーと一緒に送られてきますのでコンビニ等で簡単に支払いを済ませることができます。

パソコンで文献探し(吉の浦だより9)
郵送されてきた文献

沖縄関係の本を調べる場合は、沖縄県立図書館のHPも重要です。「県図」は他の公立館にないような沖縄関係の古い and/or 専門的な書籍も数多く収蔵しているからです。この他には、琉球大学附属図書館のトップページ最下方にある「本学図書館関連サイト」が有用です。サイトの中では「琉球大学学術リポジトリ」と「沖縄地域学リポジトリ」をよく使います。前者は琉球大学各学部の紀要や学位論文、後者は沖縄県内の市町村や学会が刊行した紀要等の論文についてのデータベースで、検索結果の論文のpdfファイルを見たり保存したりすることができます。

ついでに官報や公報の調べ方についても触れておきましょう。これらは、文化財の指定年月日を調べたり、改正前の法令の条文を読んだりする時に利用しています。新しい官報(過去30日分)と沖縄県公報(平成24年1月以降分)を読みたい場合は、「インターネット版官報」と「沖縄県公報」のHPでpdfファイルが公開されているので、これを見ます。これより古い官報の場合、1947年5月3日以降分は「官報情報検索サービス」、1952年4月30日以前分は「国会図書館デジタルコレクション」でそれぞれ見ることができます。前者は国立印刷局のサービスで、県立図書館等の端末で閲覧可能です。古い沖縄県公報や琉球政府公報は沖縄県公文書館HPのトップページから「資料検索」→「公報」と進み、検索・閲覧してみて下さい。

今日、数十年前には考えも及ばなかったような文献探しが可能になっています。技術革新は今後ますます進化するはずですので、世界中の学術情報が自宅のパソコンひとつで得られるような日が来るかも知れません。なるべく早く実現することを期待したいと思います。

一方、こういう時代だからこそモノとしての本との出会いが重要なのではないかとも思います。パソコンでの文献検索は、目的をもって行う作業ですから、探す対象はある程度定まっています。自分が想定している範囲の中でより詳細な情報を浚うことになりますので、「自分の世界を深める」作業と言えるかも知れません。図書館や本屋では、目的を持った情報探索も行いますが、たまたま目に留まった見知らぬ本に手を伸ばすということがあります。特に探していた訳ではないけれど、読んでみたら滅法面白かった!そのことによって、モノの見方が変わってしまった。と、言うような出会いも起こり得るのです。「自分の世界を広げる」場という意味で、図書館の存在意義はまだまだ大きいと考えています。

(文責:濱口寿夫)


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